「令和の飲み会」を新提案!コミュ力を高めるエッセンシャル昭和飲みの7カ条

「令和の飲み会」を新提案!コミュ力を高めるエッセンシャル昭和飲みの7カ条
目次

突然ですが、サルは一緒に食事をしたり、同じ食べ物を分け合って食べることがない、
ってご存知ですか? 

同じ群れの仲間同士でも、食事のときは顔を合わせないよう、距離をとります。ケンカや取り合いを避けるためで、運悪く鉢合わせると、序列の高い(力の強い)者がその場の食べ物を独占します。


しかし、私たち人間は古くから、食事の時間と場を共有し、他者との関係維持や調整に役立ててきた、とてもめずらしい生き物です。ビジネスの場でも、会食や飲み会で打ち解けるのは、とても人間らしい行為なのでしょう。


昨今では、職場飲み会に対して「お金を払って上司の話を聞くなんてムリ」との意見もあります。嫌な飲み会へ無理に参加する必要はありませんが、人間の性を考えれば、簡単には割り切れない気もします…。一般社団法人日本産業カウンセラー協会会長で、職場のコミュニケーションに詳しい田中節子さんと、令和の飲み会について考えました。



「欲望の共有」が人と人の距離を縮める


そもそも、職場の上司部下、同僚と飲み食いする意義は何でしょう?

「モノを食べるということは、欲望を見せ合うこと。ふだん人は欲をむき出しにすることはありませんが、食事の場で欲望を共有することで、仲間意識や関係性が強まります」と田中さん。
「同じ釜の飯を食った仲間」は、特別ですよね。


その上で、職場飲み会のメリットとして、「親近感と信頼の構築」と「コミュニケーションの円滑化」を挙げてくれました。


飲み会で時間を共有すると、職場でも気軽に声をかけたり、仕事上の相談やお願いごともスムーズにできるようになります。お酒にはリラックス効果があり、特に初対面の人と接したり、緊張感のある場面で、料理やお酒を共通の話題にできるのもよい、と田中さんは指摘します。


あえて昭和飲みを体験してみる




飲み会のこうしたメリットを取るか、コストや時間、ストレスなどのデメリットを避けるか。こればかりは、組織や働く人の判断ですが、問題は、飲み会そのものではないと、ワタシゴトは考えます。

本来の「人間らしい欲の共有」と関係のない、しきたりや上下関係が、こびり付いてしまったことが、飲み会の嫌われる原因ではないでしょうか。余計なものを削ぎ落とした上で、長年培われたジャパニーズ飲み会カルチャーの良さを生かせないものか?

そこで私たちは、職場での「エッセンシャル昭和飲み」開催を新提案します。

一見、古臭くて理不尽な昭和的なカルチャーをアップデートして、「これはおもしろい」「これは時代に合わない」と、アトラクション的に話し合ってみてください。そのなかで、自分たちにあった職場飲み会のスタイルを探していくのです。


「エッセンシャル昭和飲み」の7ルール

では、どのようにすれば「エッセンシャル昭和飲み」を実現し、楽しく有意義な時間にできるか? 田中さんの協力をいただき、7つの指針を考えてみました。


もちろん、飲酒の強要などアルハラ、セクハラやパワハラは厳禁。参加しない自由が、きちんと保証されていることが大前提です(評価が下がったり、しない)。


「武勇伝」は笑えるネタに仕上げてから


職場飲み会で嫌われるのが、「昔はこうだった」「こんな修羅場を乗り越えた」と、自慢気に語られる上司の武勇伝。でも、自分の経験を共有して、他者に活かしてもらうこと自体は、悪いことではありません。実際に、読者のなかには、飲み会の話が自分の役に立った経験を持つ方もいるでしょう。

田中さんによれば、武勇伝を聞いてもらうにはいくつかの条件があります。まずは、「その人が尊敬されていること」ですが、これは飲みの席での付け焼き刃では難しい。

おすすめは、「ユーモアを持って話す失敗談」にすること。ユーモアには人の関心を引き付け、雰囲気を和ませる力があります。失敗の経験として自分を落とせば、誰かを傷つけることも、偉そうに見えることもなく、純粋に経験を役立ててもらえます。

「無礼講」でも一線は守りつつ

「今夜は無礼講だあっ!」と偉い人が宣言して、本当に無礼が許されるような飲み会は、この世に存在しません。「オフィスでのフォーマルな雰囲気とは異なり、軽いトーンが求められることがあります。しかし、品位を保ちつつ、他のメンバーとの交流を楽しむことが重要です(田中さん)」。

オフィシャルとプライベートの間にあるのが、職場飲み会の場です。適度に羽目を外して、場を和ませられるのは、ビジネスも人生も豊かにする貴重なスキル。「エッセンシャル昭和飲み」であえて大胆に振る舞い、反応を聞いてみると、個人間、世代間のギャップを埋める、ちょうどよいラインが見つかるかもしれません。

「お酌」はあえて実行する

飲み会で気を使うポイントの定番ですが、お酌はコミュニケーションの良いきっかけになります。お酒を注ぎ、返杯を受ける、それだけで物理的に距離が縮まり、2人の時間がうまれます。ふだんやり取りのない人とも、話をはじめやすくなるのです。


ちなみに、お酌は目下の人から、目上の人に注ぐのが一般的な礼儀です。しかし、社内の飲み会なら、そこはフラットな関係として、先輩や上司からお酌してもよいかもしれません。


はじめは面倒だと感じるかもしれませんが、多様な人とのコミュニケーションに、礼儀やしきたりを活用するのも、賢いやり方です。

「今日は仕事のことは忘れて」を遵守

飲み会本来の目的は、ビジネスの問題解決ではなく、人間関係とコミュニケーションであることを思い出してください。
「仕事のことは忘れてリラックスしてください」といった建前(?)には、全力で乗っかるべきです。


仕事の話はそこそこに、それ以外で関心のあることや、趣味などの話題を広げましょう。
「自分について話すことで、互いの関係性が深まります」と田中さんがいうように、共通の話題を探すこと自体が、関係づくりに役立ちます。


仕事のお悩み相談や、モチベーションアップになってしまう飲み会もありますが、田中さんによれば、「仕事のネガティブなことを飲み会まで引きずってしまう」と逆効果。
問題解決の具体的なアドバイスは、オフィシャルなビジネスタイムのうちに。モチベーションが下がっている人には、オフィスで一声かけて、自分が味方であることを示すほうが、効果は高いと言います。

「説教」「グチ」→「ありがとう」

業務がうまく回っていなかったり、仕事のストレスが溜まっているときは要注意。
お酒も入って、つい部下をお説教したり、誰かの悪口やグチを言いたくなります。ただ、上述のように仕事関係の話題は、純粋な人間関係の構築には適しませんし、「悪口は必ず相手の耳に入る」と田中さんは警告します。


それに、ネガティブな言葉は、それだけで人の気分を下げてしまいます。ならば飲み会を、感謝の気持ちを伝える機会に利用してはどうでしょう?


お酌をしてもらったり、料理を取り分けてもらったりと、飲み会では「ありがとう」を言う機会がたくさんあります。ポジティブな感謝の言葉を伝えるだけで、相手との関係が良好になるのなら、すばらしいタイパ、コスパです。


日頃から直接/間接的にお世話になったり、協力してもらっていることに、感謝の気持ちを示すのもよいでしょう。ちょっとしたポジティブな仕事の話題は、良好な関係構築に役立ちます。

酒量は「ほろ酔い期」まで

「お酒に酔う」とは、血液に溶け込んでアルコールによって、脳が麻痺することです。血中アルコール濃度によって、爽快期(0.02~0.04%)、ほろ酔い期(0.05~0.10%)、酩酊初期(0.11~0.15%)、酩酊期(0.16~0.30%)といった段階があります。


職場飲みでは、酔って爽やかな気分になる爽快期から、顔が赤くなったり手足の動きが活発になる、ほろ酔い期が限度だと、田中さんは言います。


お酒の席での非常識な振る舞いは、オフィシャルな場での失言や失敗より、実はリカバリーが難しいと田中さんは言います。
「酔っていたから…」という言い訳は表面的には通るかもしれませんが、本当は酔っているからこそ本音や人間性が出るもの。それを、みんな心の底でわかっているのです。

良いところも悪いところも、相手を許容できるプライベートな場ではないことを理解して、くれぐれも飲み過ぎには注意してください。

「一次会のみ」予定時間できっちり終了

経験のある方は多いでしょうが、ダラダラと長い飲み会は嫌われます。田中さんは、お店が飲み放題に設定している90〜120分くらいが、ちょうどよい長さだと言います。

気の合う仲間同士で次に行くのは別として、半ば全員参加の二次会もおすすめしません。


飲み会に正論なし! 感情のコミュ力を高めよう

利害や理性が重視されるオフィシャルな場とは、質的に異なるコミュニケーションを学ぶ場として
「エッセンシャル昭和飲み」は役立ちます。

 

社内の飲み会は出る必要がなくても、社外の取引先や重要人物との会食や酒席が、
重要なシーンでやってくることは十分に考えられます。冒頭にお伝えした通り、食事を共にして良好な関係を構築する、という人間の本性は、ビジネスであっても変わらないからです。

 

まして、海外の人や企業と関係を築くならなおさらです。
国の首脳同士の外交のような、極めて重要なシーンでも、食事の機会が設けられているとおり。一般のビジネスでも“欲望を共有”して、互いの懐を見せ合うことは重要です。

グローバル化するこれからのビジネスパーソンにとって、実は飲み会は貴重なコミュニケーションの練習場になるのではないでしょうか。


田中さんは、「飲み会に正論なし!」と田中さんは断言します。

 

飲み会では、理屈よりも相手の感情を満たすことが重要。
実はそのほうが、人と人が本質的に距離を縮められ、理性が必要なビジネスの話でも、コトをスムーズに運びやすくなります。そのことを経験的に学べるのが飲み会です。

 

酒量のコントロール、ほどのよいコミュニケーション、自ら楽しみポジティブ空気をつくる姿勢etc…。
ぜひ、「エッセンシャル昭和飲み」で、スキルを身につけてください。

 

●プロフィール

日本産業カウンセラー協会会長(代表理事)

田中節子さん

長年にわたり、南海放送のテレビ・ラジオの番組制作・出演に携わる。心の支援者としての活動は、学校・企業などで「シニア産業カウンセラー」「キャリアコンサルタント」として心の健康づくりのサポート、コミュニケーション能力アップの指導、管理職向けの研修のほか、個別カウンセリングにも応じている。共著に「産業カウンセラーの目」 ((社)全国労働基準関係団体連合会)、「60歳からのルネッサンス」(学芸社)など。

 


小越建典
記事を書いた人
小越建典

課題解決クリエイター 広告代理店の営業マンを経て、2007年にライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆を担当。2014年ごろからはオウンドメディアの企画・運用に携わり、販売促進や広報・PR、ブランディングなど、コンテンツで企業の課題を解決する提案を得意とする。 メディア執筆、書籍の実績も多数。近著に「4コマで日本史(山川出版社)」。自社にてニュースレター「ソルバ!イノベDB」を運営。