「強いメンタル」の正体とは? 失敗からリカバリする超具体的な方法、教えます

「強いメンタル」の正体とは? 失敗からリカバリする超具体的な方法、教えます
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どんなに失敗しても、怒られてもへこたれない。ガツンと落ち込んでも、翌朝はケロッと出社していつもどおりのパフォーマンスを発揮。プレッシャーのかかる状況でも、臆せずチャレンジして成果を挙げてしまう

そんな「強いメンタル」「折れない心」を、どうしたら身に付けられるか、知りたくありませんか? 


それは心理学で言う「レジリエンス」。「回復力」「立ち直り力」と言われる力です。ポジティブサイコロジースクール代表で、レジリエンスの解説書を多く手掛ける第一人者 久世浩司さんへの取材をもとに、「失敗からリカバリする方法」の決定版を作成しました! 


レジリエンスとは「立ち直る力」 

まずお伝えしたいのは、レジリエンスは大小こそあれ、誰にでも備わっていること。「多くの人は、自分には強い精神力がないと思っています。どんな人にも立ち直る力があると『自覚する』ことが大切」と久世さんは指摘します。 

つまり、「強いメンタル」「折れない心」は選ばれた人だけの特殊能力でもないし、苦労して身につけるものでもありません。元々自分の中にある力を「引き出す」だけなんです。 


元々ない能力を獲得するのは大変ですが、これならどれだけ失敗しても、リカバリできる気分になってきませんか? それを自覚することが大事なんです。 

 

では、レジリエンスとは何なのか? 久世さんは「ダムの中の水」にたとえて解説します。 

誰しも、心身が健康なときは「心のダム」に水がいっぱいに入っています。少々ダメージを受けても、水は枯渇することがなく、余裕がある状態。だから、冷静かつ合理的に物事を判断して、本来のパフォーマンスを発揮することもできます。 

けれど、身体の具合が悪くなったり、人間関係がギクシャクしたり、仕事で失敗したりしてストレスが重なると、ダムに亀裂が入り、知らない間に水が漏れ出していきます。
あったはずのレジリエンスの資源が使えなくなり、リカバリーが効かなくなってしまうのです。 



「メンタルが強い人」のメカニズム 

もう少し具体的にみていきましょう。 

心のダムが満たされた=レジリエンスがある状態では、失敗しても「自分のせいだけではない」「次の結果はわからない」と、考えられます。 

冷静に考えれば、どんなに失敗を重ねても、その原因のすべてが自分であるはずはありません。その「事実」を柔軟に解釈して、心は立ち直る、ということを繰り返しながら、いつかは成果を出すわけです。 

はたからは、スーパーポジティブな考え方、ど根性でへこたれないようにも見えますが、それは違います。ロジカルに現実を分析して、自分で自分の心のあり方を決めているだけです。 

過去の成功体験や、自分の立場に固執することもなく、状況に合わせて現状を打開する方法を考え、仲間の力も上手に借ります。他人から見れば”したたか”とさえ思われるほど、柔軟にやり方、考え方を変えます。そして、どんなに落ち込んでも一晩寝たらきれいさっぱり気持ちを切り替えられる。だから、いつでもパフォーマンスを発揮できる。 

「メンタルが強い人」「心が折れない人」は、こんなメカニズムで動いています。 

しかし、心のダムが乾いた=レジリエンスがない状態では、失敗が続くと「原因は自分だ」と考えてしまいます。それは現実に即さないネガティブ思考なのですが、マジメな人ほどそこから抜け出せず、感情をコントロールできなくなります。原因と結果を正しく評価できないから、今度は本当に自分のせいで失敗。
一人でなんとかしようとして、助けを求めることもなく、さらに失敗を重ねる。 



「ドツボにハマる人」の典型的なパターンです。 

メンタルが強い人は、ダムに水がいっぱいで、レジリエンスの資源を潤沢に使える状態を、いつも維持しています。元々ダムが頑丈な人もいますが、そうでなくても、日常の工夫や習慣で、亀裂を埋めることができます。 



 失敗した日の「リカバリスケジュール」 

では、実際に仕事で失敗をして落ち込んだとき、どうすればよいのか? レジリエンスを引き出すノウハウを、誰でもできる行動に落とし込んだ「リカバリスケジュール」を提案します。立ち直れないほどの失敗をしたその日に、ぜひ実践してください。 



17:00 ピンチのときこそ早く帰って気晴らしする 

職場で失敗してみんなに迷惑をかけた後は、ちゃんと落ち込んでいなければ(そのように見せなければ)いけない!マジメな方ほど、そう考えるのではないでしょうか。
みんなより早く帰ったり、その後、趣味のスポーツを楽しんだり、陽気にカラオケで盛り上がったりなんてもってのほか!と。 

しかし、それこそ現実を見ていない証拠です。定時が終われば、早く帰って、好きなことをやっていいんです。むしろ、いつまでも落ち込んでいると、心のダムの亀裂は広がり、レジリエンスが枯渇して、リカバリは難しくなるばかり。 

大切なのは、「ストレスの宵越し(久世さん)」をしないことです。精神的に追い込まれたときこそ、できるかぎり早く会社を離れ、まず環境を変えてください。 

会社を出たら、「今日は何をしようか?」と、自分の好きなこと、その日のうちにできる気晴らしを考えてください。そんな気になれないかもしれませんが、失敗を引きずるほど良くないことはありません。気持ちを切り替えて、翌日にパフォーマンスを発揮するために最善の策をとるのが、仕事に対する本当の誠意です。 


19:00 頭や口より先に身体を動かす 

大きな失敗をして心のダムが崩壊した状態で、反省したり、対策を講じても、冷静には考えられません。だからといって、弱音を吐いてなぐさめてもらったり、励ましてもらってポジティブな気持ちになろうとするのもNG。 

久世さんは「心をコントロールするのは難しい」と強調します。嫌なことを忘れよう、落ち込んだ気持ちを和らげよう、と思えば思うほど、ネガティブな記憶がぐるぐると回ってしまいます。 

あえて身体を動かして、気持ちを切り替えていくのが効果的です。ジョギングやウォーキング(有酸素運動)で汗を流したり、好きな曲を歌ったり、楽器を演奏したり、ヨガでじっくり幸せホルモン(セロトニン)を出すのもよいでしょう。 

それで失敗を忘れることはないでしょうが、一時的に頭から切り離してリセットすることが大切です。 

21:00 おいしいものを食べゆっくり寝る

健全な心は健康な身体に宿ります。好きなことで体を動かして、気持ちを切り替えたら、おいしくて栄養のあるものをモリモリ食べましょう。 

その間に、ダムの亀裂は埋まり、少しずつレジリエンスの水がたまっているはず。こうなったら、しめたものです。失敗のことをくよくよ考えて、再び亀裂が入る前に、温かいふとんに入ってぐっすり寝てください。 

すると、夜の間にレジリエンスはさらに回復。まっさらな気持ちで朝を迎えられます。 


翌8:30 出社し思考を整理→周囲の現実的な助けを借りる 

翌日は早めに出社し、失敗の原因を探り、問題への対応や、再発防止策を考えます。潤沢なレジリエンスがある状態なら、感情でなく現実をみて、自分にできることを柔軟に考えられます。 

「目の前の高い壁を、ジャンプして越えられなければ、ヘリコプターを使えばいい、穴を掘って下から行こうか、と色々な方法を考えられるのがレジリエンスの高い人。根性で前に進むわけでなく、周りの力も上手に借りられるので目標達成力は高いんです」と久世さん。 

自分にできないこと、わからないことは、上司や先輩、同僚をうまく使って解決しましょう。自分をケアしてもらうのではなく、あくまで現実的な問題解決のサポートを、主体的にお願いするのがポイントです。 

「強み」を知ると「自分らしく」生きられる  


こうしてみると、自分で自分を喜ばせ、満たされた状態をつくることが、レジリエンスを引き出すコツだとわかります。まずは無理をせず、自分らしく生きているから、失敗やトラブルにもしなやかに対応できるのです。 

短期的には、ご紹介した「リカバリースケジュール」は良い方法です。では長期的に、自分らしく生きるにはどうすればよいのか? 

久世さんは「自分の強みを知ること」を推奨します。頭が良い、体力がある、といったスキルではなく、「向上心」「創造性」といった人間力としての強みです。 


久世さんは、強みを知って自分らしさを見つけたAさんのエピソードを紹介してくれました。 

コンサルティング会社に勤務するAさんは、仕事の忙しさ、責任の大きさに、精神的に疲れて果てていました。レジリエンスが枯渇した状態です。 

休職してしばらく実家に戻ると、同級生が取り組んでいた中高生対象のコミュニティワークを、ボランティアで手伝うことに。すると、Aさんは元気が戻ってくるのを感じたそう。次世代への教育、継承が自分の強みであり、好きなことだとわかったのです。 

Aさんは、コンサルタントの仕事に戻ってから、クライアントの若手社員に対する教育プログラムを仕事のメニューに加えました。一部が強みを生かした仕事になることで、やりがいを持って取り組めるように。 

 

こうして「強み」をテコに、「自分らしさ」とレジリエンスを取り戻したのです。 

 

Aさんは、一連の体験で自分の強みに気づきましたが、より手軽に見つけることも可能。久世さんは、米国の著名な心理学者たちが開発した「VIA強み診断テスト」をすすめます。 

無料で利用し、トップ5の強みを見つけ出すことができ、それらを仕事や生活で活用することで、充実感や幸福度が向上するという研究結果があるそう。長期的にレジリエンスを向上させるだけでなく、強みを知ることで、修羅場を乗り越える具体的な武器にもできます。 

ぜひ、「VIA強み診断テスト」にチャレンジしてください! 

 



◯プロフィール

久世 浩司(くぜこうじ)さん 
ポジティブ サイコロジー スクール代表 

慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社。高級化粧品のマーケティング責任者としてブランド経営に携わる。在職中にレジリエンスについて学び、 応用ポジティブ心理学準修士課程修了。P&Gを退職後、ポジティブ心理学の実務家を養成する社会人向けスクールを設立。レジリエンスを活用した企業人材の育成に従事。レジリエンス研修は、NHK「クローズアップ現代」でも取り上げられた。主な著書に『「レジリエンス」の鍛え方』(実業之日本社)、『リーダーのための「レジリエンス」入門』(PHP研究所)などがある。 

 





小越建典
記事を書いた人
小越建典

課題解決クリエイター 広告代理店の営業マンを経て、2007年にライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆を担当。2014年ごろからはオウンドメディアの企画・運用に携わり、販売促進や広報・PR、ブランディングなど、コンテンツで企業の課題を解決する提案を得意とする。 メディア執筆、書籍の実績も多数。近著に「4コマで日本史(山川出版社)」。自社にてニュースレター「ソルバ!イノベDB」を運営。