生存戦略としての「気配り革命」10か条〜「気配り上手にチャンスが集まる」~
「みんなが一緒に働くオフィス、心地よく過ごせる方が良い」
みんなが共通して抱く思いでしょう。しかし、忙しい毎日で…
「他の人に気配りしている場合ではない」「仕事以外で気を使いたくない」というのも、多くの人が持つ本音ではないでしょうか。
では、気配りをサボることが、自分のキャリアやスキルアップに影響するとしたら、どうでしょう。「日本一のプロ秘書」(日本秘書協会のベストセクレタリー受賞)として知られる中村由美さんは、「しかめっ面で”話しかけるなオーラ”を出している人と、周囲に良く気がつき機嫌よく仕事をしている人、上司はどちらに仕事を頼むでしょうか?」と指摘します。相手の立場で考えれば、後者ですよね。
「気配り上手にチャンスが集まる」
これがオフィスで働く上での真理だと言われれば、多くの方は納得するのではないでしょうか。
だとすれば、気配りは生易しいものではなく、もはや「成長戦略」のひとつ。カレーハウスCoCo壱番屋を運営する壱番屋で長年秘書を勤めた経験から、中村さんが気配りの具体的なノウハウを授けてくれました。
1.「い」の口を常時キープ
自分ではなかなか気づきませんが、場の空気をつくる上で仕事中の表情は要注意。集中していると、書類やパソコンをにらみつけるような硬い表情になりがちです。
色々な人にあいさつしたり、話しかけられたら即座に対応しなければならないのがオフィスでの仕事。しかし、「真顔から急に笑顔をつくると不気味です」と中村さんは言います。そもそも、真剣すぎる表情の人には、用事があっても話しかけづらいですよね…。
これは、口角を少し上げて表情をつくり、話しかけられる準備をしておくだけで、大幅に改善します。無理に自分から冗談を言ったり、笑顔を振りまく必要はありません。
イメージは「い」を発音するときの口の形をキープ。自然と口角が上がり、それにともなって目尻が下がり、柔らかい表情になります。とっさの声も、明るい印象の「笑声(えごえ)」になると、中村さんは言います。
慣れないうちは、表情をつくるのを忘れてしまいますが、ときどき意識するだけでOK。中村さんは、デスクに鏡を置いておき「集中しているときに見ると、自分がどんな怖い顔をしているのかわかります」とすすめます。
2.360°に耳を開放
壱番屋さんでは、「自分以外はお客様だと思って仕事をする」ように教えられるそうです。オフィスでも来客はもちろん、同僚も含めて周囲の動きを素早く察知しなければなりません。
中村さんは「後ろに目がついている」状態をイメージし、仕事をしながらも集中しすぎず、耳を全方向に向けていると言います。オフィスで探しものをしたり、困っている人がいれば、即座にフォローできる状態をつくっています。
重要なのは、同じことを「全員ができるわけではない」こと。仕事の内容や個人の資質にもより、むしろできる人は少数派だといいます。「10人のうち2人ができれば、オフィスは気持ちよく回っていきます(中村さん)」。
3.キャラクターを相互に理解する
仕事に集中して周りが見えなくなる人がいるのは、オフィスでは致し方ないこと。中村さんは、「チームワークの気配り」をすすめます。
話しかけても反応が良くない(まったくない)人には、一旦引き下がってタイミングを改める。自分が隣に座っていたら、「後にしたほうがいいみたい」とフォローを入れる。
その人の「集中癖」を理解してフォローし合えば、対応に気を悪くすることも、場の空気が悪くなることも、避けられるはずです。
また、自分に集中癖がある人は、それが当たり前だと思わないことが肝要。良くない対応をしてしまったら、相手が後輩や部下であっても、先に謝って理解してもらいましょう。
4.偉くなるほど即レス
人から質問や依頼を受けたとき、自分のレスポンスは、相手の仕事のスピードに影響します。即レスは相手への敬意であり、極めて実用度の高い気配りです。全体の進行のスムーズさは、自分の進行にも返ってきます。
特に職位が上がり、責任ある立場に就くほど、自分の判断で何人もの人が動くので、全体への影響が大きいです。しかもチームの進行は、自分の評価に直結します。オープンな雰囲気で(「い」の口をキープ)部下が情報を入れやすい環境をつくり、即レスしたほうが、自分にとっても絶対に得なのです。
5.報連相は口頭と文書を組み合わせて
報連相はビジネスパーソンの基本、と言われつつも、実はとても難しい問題です。求める頻度や内容は、上司によって違います。同じことでも「そんな細かいことまで言わなくていい!」という人も、「なぜちゃんと上司に報告しないんだ」という人もいるはずです。
正解はありませんが、上司からどう思われても「報連相はこまめにするべき」と中村さんは断言します。どんな情報が必要で、不要かは上司が判断すること。あとから「報告がなかった」と言われないよう、自分を守るために、すべての情報を上げておくべきです。
ただ、報連相は口頭だけでなく、メールや書類で行うこともできます。緊急でなければ、忙しいときに話しかけるのは控えてメールで送るなど、上司の仕事を妨げないよう工夫しましょう。
なお、忙しい人には、Yes、Noで判断できる程度まで、噛み砕いた聞き方が喜ばれます。
6.あいさつは目を見て気持ちを込めて
あいさつは、仲間の体調や気持ちを知ることができるチャンス。必ず、目を見てあいさつし、表情から微妙な変化を察知できるようにしましょう。
相手が何か話したそうにしていれば、雑談から距離を近づけてみてもよいかもしれません。相手にその気がなければ、無理に踏み込まず、その場はあいさつの一言で済ませればOK。ぶっきらぼうな人もいるかもしれませんが、「自分がやらなければ、相手の態度も、お互いの距離も永遠に変わらない」と中村さんは言います。
あいさつされた側から見れば、「おはよう」「お疲れ様」に気持ちのこもっていることがわかるだけで、自分を気遣ってくれていると感じられます。それだけでも、十分にうれしい気配りになるのではないでしょうか。
7.話しかけ方のテクニック
職場で仕事中に誰かに話しかけるときは、「ちょっといいですか?」「今大丈夫ですか?」と、まず一声かけます。自分に注意を向けていない相手に、いきなり用件を話しかけるのは、土足で部屋に入るのと同じ。まずドアを開ける許可をもらう「ノック」が必要なんです。
このとき、真正面、真横に立つと相手に圧迫感を与えてしまいます。斜め、あるいは斜め後ろから相手の視界に入るようにします。
また、中村さんは「ちゃんと相手の目をみて話しかけて」と強調します。忙しいオフィスでは、相手の顔ではなく、書類やパソコンの画面に向かって話してしまうこと、ありませんか? まずアイコンタクトで気持ちを通わせることが大切です。
8.おいしい食べ物で和ませる
オフィスの雰囲気がギスギスしていたり、元気がない人がいるときにこそ、さりげない気配り力を発揮したいもの。予算をかけられるなら、なんといっても「おいしい食べ物」の差し入れは強力です。
食べ物はみんなの気持ちを和ませ、共通の話題にできます。チョコレートなどちょっとしたお菓子を差し入れて、休憩所など共有スペースに置いておくと、押し付けがましくなりません。個包装の商品にすると、衛生面で敏感な人も食べやすいでしょう。
落ち込んでいたり、イライラしていたり、調子を崩している人には、お菓子休憩を口実に声をかけて、仕事を離れたトークで気持ちを緩めてはいかがでしょう。きっと業務にもよいフィードバックがあるはずです。
9.目の前の現象を言葉にする
さりげないけれど、受け取った側が「気遣ってくれているな」とわかるような、気持ちの通ったコミュニケーションができる人がいます。そんな気配り上手に今日からなれる、中村さんとっておきのメソッドをお教えしましょう。
「目の前の現象を言葉にする」です。
例えば、雨の中を退勤する同僚に…
「お疲れ様」という通り一遍のあいさつに、「ひどい雨だね。帰り気をつけてね」と加えたらどうでしょう。特別なことではありませんが、ちょっとしたプラスαの一言で、「あなたのことを大切に思っています」という気持ちを、自然体で伝えられます。
考え込む必要はありません。「雨が降っている」という目の前で起こっていることを、そのまま言えば良いんです。
10.要注意ワード&アクション
最後に、気配りに関するNGな言動をまとめました。
- ボディタッチ…励ましたり勇気づける意味でも身体に触るのはなし。同性同士でもボディタッチは避けるのが賢明
- 決めつける言葉…「今日は元気ないね」「部長はせっかち」など主観で決めつけると、誤解を与えたり、相手を不快にする可能性があります
- マイナスの言葉…「〇〇がない」「□□はダメだ」とネガティブな表現は、たとえ悪い意味がなくても相手の気持ちを下げます
- 批判的な言葉…クレームを言わねばならないときも、ポジティブな言葉で。「△△をやめて」ではなく「〇〇してはどうか」と提案型で。
まとめ
「コロナ禍の3年間は、他人に無関心でも仕事ができました。そんな状態で過ごして来た人は、余計に気配りの難しさがあるかもしれません」と中村さん。
マスクやソーシャルディスタンス、リモートワークに慣れたビジネスパーソンに、理解を示します。
まずは気負わず、職場の仲間に関心を向けることからはじめましょう。そのうえで、本稿を参考にすれば、あなた自身の振る舞いが確実に変わります。気配り力でチャンスをつかみ、チームを元気にしていきましょう!
課題解決クリエイター 広告代理店の営業マンを経て、2007年にライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆を担当。2014年ごろからはオウンドメディアの企画・運用に携わり、販売促進や広報・PR、ブランディングなど、コンテンツで企業の課題を解決する提案を得意とする。 メディア執筆、書籍の実績も多数。近著に「4コマで日本史(山川出版社)」。自社にてニュースレター「ソルバ!イノベDB」を運営。