本当に相手に伝わる「伝え方」のコツ!パワハラにならない指導法とは…!

本当に相手に伝わる「伝え方」のコツ!パワハラにならない指導法とは…!
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相手のため、会社のために良かれと思ってかけた言葉が、その人を傷つけ、大きな問題になる……。気をつけていても、無意識に行ってしまう可能性があるのがパワハラです。


長く「マネジメント代行」のサービスを提供し、「いつも結果を出す管理職が必ずやっている80のこと」を上梓したばかりの市原義文さんに、「パワハラにならない指導法」を聞きました。言葉遣いなど表層的なことだけでなく、ぐっと踏み込んだマネジメントノウハウ。部下ができて接し方に困っている人は必見です。


パワハラはなぜ起こるのか?

厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を次のように定義しています。


同じ職場で働く者に対して、 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、 業務の適性な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与える または職場環境を悪化させる行為です。


苦痛を与えてはいけないのは理解できるし、与えたくもない。でも、上司、先輩として言わなくてはならないこともある。「業務の適性な範囲」と言われても、誰が、どんな基準で判断するのか??


部下や後輩ができたばかりの人はもちろん、長くマネジメントに携わっている人も、明確な答えを持つのは難しいのではないでしょうか?


同じ言葉でも、受け手によって感じ方は変わります。もっと言えば、「誰が言うか」、お互いの関係によっても、まったく違うのがコミュニケーションです。


そこで立ち返りたいのがビジネスの原則。


市原さんは、

  • ビジネスにおいて最も大切なものが「信頼」である
  • 「信頼」は社内の上司部下の関係でもベースになる

と大前提を提示します。







職場での上下関係は、以前ほど強固ではありません。たとえ上司になっても、部下が黙ってついてきてくれるわけではないし、パワハラには厳しい目が向けられています。


それなのに「信頼関係がない状態で、相手のことを考えず、不用意に行うコミュニケーション」が、パワハラとして問題になるのではないでしょうか。難問を克服する方法を、「意識を整える」→「相手を知る」→「共創する」の3ステップで整理しました。


1.意識を整える→相手が必要だと確認し興味を持つ

部下との信頼関係を築くには、まずは自分自身の意識を整理しましょう。

 

そのために市原さんイチオシの方法は、

「担当するチームの仕事を、ぜんぶひとりでやってみる」

です。

 

もちろん、実際にそんなことはできません。量の問題ではなく、自分にも部下にも得意・不得意があり、分担し合うことでチームが成り立っていることを、実感するはずです。


部下の力は、自分にとって絶対に必要。それを再確認すると、一人ひとりに対して興味が湧いてきませんか?


「部下はあなたに従う人ではなく、あなたとは違う経験を持った”おもしろい人”。そう考えると、コミュニケーションがうまくいきます(市原さん)」。


一方、相手に興味関心がないままコミュニケーションを取ろうとすると、自分の言いたいことを押し付ける形になり、パワハラに至る可能性があります。


例えば部下のひとりが、上司であるあなたの意図とは違った行動をとり、失敗したとします。相手に興味を持っていれば、「なぜそのやり方が良いと思ったの?」と聞くことができ、何かの答えが返ってくるでしょう。それなら答えを修正したり、注意することもできます。



しかし、相手に興味がないと「なぜ言う通りにしないんだ?」と、自分本位で言いたくなりませんか? 質問しているようで、真意は「言ったとおりにやれ」ですから、返ってくるのはおそらく、「すみません」という謝罪か、取り繕った言い訳です。


このように互いに信頼を欠いた関係性が続いて、相手が極度のストレスを感じれば、パワハラになる可能性があります。


上司部下は上下関係ではなく役割の違いだと理解し、部下を必要として興味を持ち、まずは質問や相談として、課題を投げかけること。日々のコミュニケーションで続けていると、だんだんと信頼関係が構築されていくはずです。


2.相手を知る→脳と承認のタイプ分類法

パワハラを防ぐため次に重要なのが、相手に合わせたコミュニケーションをとること。そのためには相手を理解していなければなりません。


そこで、市原さんが自身も活用してきたのが、2つの軸によるタイプ分けです。

 

1.(科学的・論理的な思考が得意な)左脳派か?(直感で理解するのが得意な)右脳派か?


2.褒められて伸びるか? 追い込まれて燃えるか?

例えば、チームの売上が目標に達しておらず、もう少し部下にがんばってもらいたいとき…。


左脳派の人には、詳細で具体的な情報=数字の確認から、コミュニケーションをはじめます。チームに与えられた予算と、現状の実績を確認し、足りていなければ原因を突き止める。そこから全体のなかでチームとその人がやるべきこと、やるべきこと、改善すべきことを導いていく、という流れです。


一方、右脳派の人に対して細かい数字から入っても、直感を刺激できず理解が進みません。

まずは、会社の現状や外部環境など、全体像から意識を合わせていきます。そのうえで、目標達成のための課題を共有し、数値目標に落とし込む、というアプローチが有効です。

 

褒められて伸びるタイプの人には、はじめからネガティブな会話をすると、情報を受け入れるレセプターを閉じてしまう可能性があります。相手の得意なことや、すでにできていることなど、ポジティブな話題で「褒められたい」欲求を満たしてから、改善点や反省点を伝えていきます。


反対に、追い込まれて燃えるタイプの人には、ストレートに期待を伝えます。「よくやっているけれど、もっとできる」「〇〇さんなら、これくらいやらないともったいない」と、プライドをくすぐると、がぜんやる気になるはずです。


ただ、成果を出したときには、しつこくならない程度に、しっかり褒めましょう。「人間は誰しも承認欲求があるものです(市原さん)」。

 

右脳派と左脳派を見極めるには、顧客の情報など簡単な質問を投げかけてみましょう。右脳派の人は、「社員に活気があって勢いを感じる」「新しいことにチャレンジするおもしろい会社」など、大まかに物事を捉えて回答します。左脳派の人は、「売上が前年比115%と伸びている」「新しいサービスで20〜30代女性の市場を開拓している」など、数字や具体的な事柄に言及します。


褒められて伸びるか、追い込まれて燃えるかは、かける言葉を変えてみて、相手をよく観察すればだんだんにわかってくるはずです。

 

対話の頻度も大切です。1日に3分でも毎日、上記のタイプを意識し、修正しながら話しかけると、ぐっと距離が縮まります。信頼が構築され、シビアな注意をしなければならないときでも、相手に合わせた話し方がわかるので、パワハラのリスクは下がるはずです。


3.共創する→60点からともに仕上げる

パワハラのリスクが非常に高いのは、感情的なコミュニケーションです。言いたいことがあっても、いったん心を落ち着かせて、冷静に会話をしましょう。


そもそも部下や後輩に対して、イライラしたり、ハラハラしたり…感情的になってしまうのは相手に期待しているからです。「もっと活躍してほしい」「ミスを繰り返さないでほしい」「納期を守ってほしい」etc…。


感情のままに話すと、「やる気がない」「〇〇だからダメなんだ」と、その人自身を否定するような言葉になってしまいます。これはパワハラです。


「仕事を憎んで人を憎まず」が市原さん流。感情ではなく、事実として期待値と成果のギャップを共有することが大事です。そのうえで、根本的な原因を相手自身が考えるように仕向けます。


「このままだと今期の目標まで◯%届かない。今できることを考えてみよう」

「この仕事、〇〇日までにお願いしたけれど、◯日遅れている。原因はなんだろう?」


部下はあなたほど、目標に高い意識を持っていないことがあります。相手が現状を理解していないのに、言い分を押し付けられても、そもそも話が噛み合いません。話を聞くことを止め、パワハラだと認識する可能性があるのです。


また、あなた自身の高すぎる期待も、感情的なパワハラの原因になります。


「部下に仕事を依頼するときは、100点満点を求めるのではなく、はじめから60点の仕上がりで来る、と思っていてください。それを具体的に改善しながら、2人で80点に持っていくのです」と市原さんは、目安を示してくれました。


 

すると、部下の改善点や反省点が、上司にとっても自分事になります。指示や命令ではなく、「どうやったらできるだろう?」と、一緒に目標へ向かって考えるコミュニケーションになります。パワハラとは正反対の共創を通して、信頼関係が構築されていきます。


部下を注意する前に見るべきチェックリスト


あなたの立場が変わっても、人間性が一気に変わるわけではなりません。コミュニケーションに失敗することも、感情的になることもあるでしょう。そんなとき、信頼関係ができると多少のトラブルは乗り越えられます。


ただし、信頼は「築城三年、落城一日(市原さん)」です。パワハラにならず成長してもらうには、日々のコミュニケーションが大切です。そこで、部下に要求を伝えたい時、感情的になった時、言葉をかける前に見て欲しいチェックリストを作成しました。


今日からのマネジメントに役立つはずです。ぜひ、ダウンロードしてパソコンやスマホに保存してみてください!

小越建典
記事を書いた人
小越建典

課題解決クリエイター 広告代理店の営業マンを経て、2007年にライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆を担当。2014年ごろからはオウンドメディアの企画・運用に携わり、販売促進や広報・PR、ブランディングなど、コンテンツで企業の課題を解決する提案を得意とする。 メディア執筆、書籍の実績も多数。近著に「4コマで日本史(山川出版社)」。自社にてニュースレター「ソルバ!イノベDB」を運営。